株式会社大林組と株式会社EARTHBRAINは、2025年10月27日から31日にかけて、福島県白河市の「ATOS Village」で遠隔・自動化施工の実証を共同で行いました。
この記事のポイント
- 大林組とEARTHBRAINが、福島県白河市「ATOS Village」で遠隔操作と自動運転を組み合わせた施工を実証(2025年10月27日〜31日)
- 河川堤防の盛土工事を想定し、複数建機を連携させて積込みから運搬、敷き均しまでを一つの流れで実施
- 一人のオペレーターによる複数建機の運用、人検知・緊急停止などの安全運用、施工計画から実績までのデータ連携を確認
- サイクルタイムの実測では課題も確認。技術・工法・事業性・規制の四つを並行して進め、社会実装を目指す
ATOS Villageは、Atos株式会社が約45万平方メートルの敷地に整備する、大規模な実証・実験・教育フィールドです。本実証では、河川堤防の盛土工事を想定し、油圧ショベルによる積込みから、運搬車による土砂の運搬、ブルドーザーによる敷き均しまでの一連の工程を、遠隔操作と自動運転を組み合わせて実施しました。
本実証の目的は、建機一台ごとの自動化性能の確認にとどまりません。施工計画、作業指示、複数建機の制御、施工実績の取得までを一つの流れとしてつなぎ、無人化施工を現場で運用するうえでの技術面・運用面の課題を洗い出すことにあります。
実証概要
なぜ、建機単体ではなく「施工全体」を検証したのか
建設業は、生産年齢人口の減少に加え、災害の激甚化やインフラの老朽化への対応という課題に直面しています。国土交通省の「i-Construction 2.0」でも、建設現場のオートメーション化による省人化、安全確保、働き方改革が重要なテーマに掲げられています。
一方、これまでの自動化実証の多くは、一台の建機が自動で動くかどうかという技術確認にとどまりがちでした。実際の現場では、施工計画をつくり、複数の建機へ作業を割り当て、進捗に応じて指示を見直し、安全を管理し続ける必要があります。
そこで本実証では、技術課題に加えて、施工会社が実際に運用できるかという運用課題まで検証の範囲を広げました。その先にある事業性、安全基準、規制上の論点を具体化し、現場運用モデルの確立につなげる狙いです。
ATOS Villageで使用した機材と役割
実証フィールドには、積込み、運搬、敷き均しを担う複数の建機と、それらを離れた場所から操作・監視するオペレーション室を配置しました。
積込みから敷き均しまでを一つの流れで実施
実証では、ATOS Villageの一部を河川堤防の盛土工事に見立て、次の施工プロセスを実施しました。
- オペレーターが遠隔コックピットからPC200を操作し、土砂を運搬車へ積み込む
- タブレットや車両管理システムから運搬車へ発進・作業指示を送る
- CD110RまたはHM400が積込み地点から排土地点まで自動走行する
- 運搬車が指定された排土場所で土砂を排出する
- D65PXiが遠隔操作と自動制御を使い、計画した層厚に合わせて敷き均す
- 建機の稼働状況と施工実績を取得し、次の作業計画の修正につなげる
また、同一の遠隔コックピットで油圧ショベルとブルドーザーを切り替え、一人のオペレーターが複数の工程を担う運用も確認しました。従来は建機ごとのオペレーターに管理技術者を加えた体制で行っていた施工を、管理と遠隔操作を組み合わせた少人数体制へ置き換えていく考え方です。
ATOS Villageで行った遠隔・自動化施工実証のデモ映像
計画、作業指示、建機制御、実績をデータでつなぐ
本実証では、建機の動作に加えて、施工計画から施工管理までのデータ連携も検証の対象としました。
まず、CMS(Construction Management System)で、地形の変化、土量、施工エリア、建機配置、運搬ルートを含む全体計画・週間計画を検討します。この計画を日々の作業範囲や作業量へ落とし込み、FMS(Fleet Management System)を通じて各建機へ指示します。建機側では、ACS(Autonomous Control System)が自己位置推定、経路計画、障害物検知、車両制御を担います。
施工後は、土量、運搬サイクル、建機の稼働状況といった実績を取得し、計画との差を確認します。現場の状況に応じて次の作業計画を修正していく、計画・施工・実績の循環をつくることが狙いです。
人検知と緊急停止を含む安全運用
遠隔・自動化施工の安全は、建機に安全機能を搭載するだけでは確保できません。現場の人、建機、施工状況のそれぞれが情報を共有しながら、全体として安全をつくる必要があります。
実証では、無人エリアと立入制限エリアを設定し、人を検知した際に自動運転車両が緊急停止する動作を確認しました。作業員が携帯できる安全装置や、関係者が建機と人の状態を把握する仕組みも含め、異常時に誰が、どの情報をもとに停止・復旧を判断するのかという運用面まで検討しています。
こうして人・機械・環境が情報を共有しながら現場全体のリスクを抑える「協調安全」の考え方は、自動化施工を社会実装するうえで欠かせない前提になります。
実証で見えた成果と課題
複数建機を連携させ、積込みから運搬、敷き均しまでの一連の工程を、遠隔・自動化施工として成立させられることを確認しました。同じ動作を繰り返す自動運転では一定の再現性が得られ、オペレーターの習熟に伴って積込みや作業指示の効率が上がる傾向も見られました。
一方で、積込みから運搬、排土、復路までの一連のサイクルタイムを計測したところ、現時点では自動化が直ちに速さにつながるわけではないことも確認しています。走行速度の設定、操作のタイミング、積込みと運搬の間に生じる待ち時間などは、建機単体ではなく施工プロセス全体で改善していく課題です。
今後に向けた意味
今回の実証が示したのは、建機を自動化する技術だけでは無人化施工は完成しない、ということです。施工計画、複数建機の役割分担、遠隔操作、自動運転、安全管理、実績データまでを一つの運用として設計してはじめて、現場で使える仕組みになります。
社会実装に向けては、次の四つを並行して進めていきます。
- 建機とシステムを安定して連携させる「技術」
- 施工会社が現場で継続的に使える「工法・運用」
- 保守や教育を含めて持続できる「事業性」
- 自動・自律建機に対応した安全基準や「規制・標準化」
大林組とのATOS Villageでの実証を通じて、技術開発から現場運用へ進むために解くべき課題が具体化しました。LANDLOGは今後も、施工会社、建機・システムの開発企業、現場の関係者とともに、実証で得た知見を実工事へつなげていきます。
