ランドログとともに、建設業界が抱える課題解決にチャレンジする企業を紹介するランドログパートナーインタビュー。 第1回は「圧入工法」と呼ばれる技術を世界で初めて実用化し、特殊なくい打ち機で世界シェア9割を誇る「株式会社技研製作所」様にお話を伺いました。 現在、株式会社技研製作所様では、自社のアプリケーション販売やメンバーシップ会費の回収スキームをランドログマーケットプレイスで実現しています。
<お話を伺った方>
松岡 様株式会社技研製作所 執行役員 圧入工法推進事業担当
矢野 様株式会社技研製作所 販売企画部 部門リーダー
田村 様株式会社技研製作所 製品販売推進部 サポート課 課長
徳森 様株式会社技研製作所 販売企画部 販売企画課 係長
取材日:2021年1月某日
取材場所:株式会社技研製作所 東京本社(東京・有明)
(本記事は、ランドログパートナーインタビューの第一回です。)
技研製作所様:当社は、建設工事のあるべき姿といいますか、国民の視点にたった工法選定基準「建設5大原則」を守り抜くことを会社の軸としています。
旧来の建設工事では、くい打ち工事の際に出る騒音が近隣住民や働く建設作業員の心身の問題となっていました。そこで、「無振動、無騒音で建設作業ができないか」を考え圧入工法を見出したのです。そこで生まれたのが、当社の「サイレントパイラー」です。
「サイレントパイラー」の特徴などは、当社のHPに動画で説明を掲載しているので、ぜひご覧いただきたいと思います。簡単に言いますと、既に地中に圧入した“くい”にサイレントパイラーを固定して、次の杭を圧入していくというやり方です。既に圧入された“くい”には土の圧力がかかり、地球と一体化されて抜けにくい、という特性を使い「サイレントパイラー」を製品化しました。
また、建設工事では仮設工事に費用と時間が掛かります。当然、この費用をなくすことでメリットが生まれます。これが仮説レス施工(GRB System)※であり、これにより安全でスピーディな工事が可能となりました。“くい”の搬送、たてこみ、圧入を杭の上部だけで完結するので、従来では施工が困難だった水上部や道路脇、高架下など、地域経済への負荷を最小限に抑え、安全でスピーディな工事を行うことが可能となりました。羽田線の首都高速改築工事など、当社の架設レスのテクノロジーが活躍しています。
※Giken Reaction Base System
技研製作所様:また、圧入原理の応用により、従来の工法(大きな場所と期間が必要)から、インプラント工法(工場で“くい”を作って現場で圧入するだけ)を、世の中に提案しています。
このインプラント工法は、東日本大震災において旧来の施工方法で建築されていた堤防が破壊されたことで、注目を集めている工法です。インプラント工法は、工事の影響範囲を少なくするだけでなく、道路などの構造物を作ったあとのサイクルにも有効な工法です。使い終わった“くい”は引く抜くだけでその役割を終了します。そして引き抜いた“くい”は次の建設現場に転用できるのです。つまり、建設物を作る際、技研製作所のテクノロジーを使えば、設計から必要な部材の製造、施工、維持管理までのプロセスをパッケージ化することができるということです。
技研製作所様:当社は、とにかく「新しいものを作り続けていく」というスタンスの会社です。当然、今まで無かったものですので、新しく生み出したものを「知ってもらう」という点で大変苦労しています。
実は、「サイレントパイラー」は、1975年に1号機が誕生しました。それから、公共工事の積算基準にのるまでに10年以上かかりました。「世の中にないものを作って、世の中に知ってもらうことからスタートする」ことの繰り返しですから、マーケットのボリュームを創るところから常に始まっています。
建設業界における“前例主義”の文化があることは仕方ないことだと思っていますが、そこを打ち壊すことが私たちの活動の始まりだったりします。
例えば、当社は「国土崩壊」という書籍を出版しています。様々な水害が発生する日本において、土堤堤防(土でしか堤防をつくってはいけない)が原則となっている河川や堤防の工事が“前例主義”なのですが、インプラント工法だと環境に左右されずに早く丈夫な堤防が作れると考えています。これまでは、提案するまでにも時間がかかったりしていましたが、最近は割とすんなりお話を聞いていただけるようになってきています。
私たちが“良い”と思っているものを認めてもらい、そして態度を変えていっていただくような活動のためには、土台を作り、具体的な結果を見せてあげることが重要だと考えています。ただ、その営みの中でも、「建設5大原則にあっているか?」という観点は、常に忘れないようにしています。
技研製作所様:当社は創業以来、圧入機械の販売を収益の軸としてきました。私たちとしては、建設の5大原則にマッチしている商品として海外マーケットにも展開できると考えていますが、昨今の建設労働従事者の減少などを鑑みると、圧入機械の販売だけで右肩上がりの事業計画が描けるのか?という課題意識を持っています。成長を続けるためにもマーケットを広げていくわけですが、当然ライバルも増えていきます。その市場競争の中で、「どれだけ差別化を図れるか」が重要だと考えています。
当社の業務領域は、機械開発から始まり、構造物の開発まで発展しています。私たちの、「現場を仕上げるノウハウを新しい商材として使えるのではないか」、そこが差別化要素として使えるのではないかと考えたのが3年前です。つまり、「“モノ”以外の私たちの強みを、商品としてどう売っていくか」がスタートでした。
私たちも、コマツさんやランドログさんのように、現地での現場指導というノウハウを持っているのですが、「現地で施工効率を上げるためのソフトや機械管理のソフトなどを提供できれば、現場の効率化に貢献できるのではないか」と考えています。そういう風に事業の軸足を変えていかないといけない、「モノを売り続ける時代は永遠に続かないだろう」という課題意識をもって取り組んでいます。
そこで、これまでの販売チャネルを考えた時、私たちのビジネスは、“くい”を打つ機械をメーカとして製造して、それを使う専門工事会社さんに売っているチャネルしかなかったのです。元請けに現場管理が便利になる施工管理ソフトを提供するとか、地盤情報を設計者に提供したり、構造物が設計通り機能を果たしているというデータを発注者へ販売するなどを考えた時、「使ってもらえる専門工事会社以外の様々なチャネルが必要になる」と考えました。そのチャネルを構築する際、私たちがデータプラットフォームを開発して、そこに様々なお客様を集めていくというのは「非常に難易度が高い」と議論をしていました。
そこに、コマツさん主導の「ランドログ」が、「建設業のプロセスをつないでいく・現場の効率化を実現する」というコンセプトを掲げて現れました。まさに、「私たちがめざす方向性と全く同じ」なので、一緒にやっていけばいいのではないかと考えて参加することにしました。ともに歩むことで、国への働きかけや現場への働きかけなどを、パートナーの皆様と一緒にできる機会が増えて来ると思っています。
技研製作所様:いま、ランドログで販売させていただいているのは、「PPTS(Press-in Piling Total System) 自動運転のソフト」と「PPTS地盤情報推定ソフト」に加え、「GTOSS」という、当社のメンバーシップ年会費の課金に利用しています。
GTOSS会員は、現在120社程度入っています。それは当社のノウハウを学びたいということで会員になってくださっています。当社顧客の3分の1はGTOSSの会員になってくださっているのです。
これからの時代は、ヒトが培ってきた経験や技術とかではなく、「機械が判断して最も効率のいいやり方で施工してくれる仕組み」が重要になってくると考えており、その取り掛かりとなる自動運転と地盤推定のソフトを販売しています。おかげさまで、使っていただくことで、良い評判につながっています。
この自動化という点の理解が戦いでして、現場のオペレーターさんは自身の技術に自信をもっており、なかなか機械に任せる、というのが難しいと感じています。ですが、私たちは、これからは「機械の動かし方自体が自動化されていく時代になる」と考えています。つまり「職人どうこうではないですよ」と、考え方を変えていきたいと思っています。
あと、ランドログポータルで課金するって、言い方もカッコいいじゃないですか。新しいことをやってるという感が演出できますし。この業界はなかなか古いということはわかってますし、ランドログのホームページに無理にでも誘導すると、多少なりとも建設業界の進んでいる雰囲気が感じ取れるじゃないですか。そういった点も期待しています。
実際、私たちも請求書の発行などもランドログの課金システムに任せてしまってることでずいぶん楽させていただいています。他のパートナーはどのくらい利用されていますか?
ランドログ:実は利用しているパートナーはまだ少ないです。自社提供されるパートナー様も多いです。
技研製作所様:そうですか。自社でプラットフォームを作るという発想もありましたが、当社の場合は、今までお話しした課題を解決するために、このシステムがベストだと考えて活用させて頂いています。また、ランドログさんのブランド力を活用でき、様々な顧客への情報展開が考えられると感じます。ランドログのブランド力を使った方が、さまざまな顧客への情報展開が考えられると思います。
技研製作所様:まず第一に、ランドログに加入をすることで、「今までリーチが難しかったチャネルの開拓を進めていけたら」と期待を寄せています。
また、この手のIoTを活用して建設現場の効率化を実現するプラットフォームは、将来、「必ず1つのプラットフォームにまとまっていく」と思っています。そこをランドログがおさえてもらえることを期待してます。私たちは、「ランドログのようなプラットフォームが最後には勝つのではないか」と思っています。
そうなると、私たちも「自分たちのデータを活用できる幅が広がってくる」と考えています。例えば、CADと連携したりすることはランドログを通じて連携できると思っています。
また、直近では、「ビジネスマッチングなどの機会を作って欲しい」と考えていますし、私たち自身も「新しいデータ活用の取り組みをランドログを使って実現したい」と思っています。例えば、現場の圧入機械を現場で管理するアプリケーションを作って提供できないか、そのためのデータをランドログで提供できないか、などを考えています。
こういう考え方やプラットフォームにつながるデータを集めるという思想に乗っていかないと、結果的に「将来置いていかれるという危機感」を持って取り組んでいます。「ランドログの取り組みが、未来のデファクトとなること」を期待してパートナーに加入しているところです。今後は、私たちも課金だけではなく、「データ活用のアプリ開発などにも取り組んでいきたい」と思っています。
記念すべき第一回目は、「ランドログとめざす方向性が同じ」という技研製作所様にお邪魔して、パートナー制度に加入し、ランドログのマーケットプレイスを活用いただいている意味や目的について詳しくお聞きすることができました。
唯一無二のテクノロジーに加え、建設の5大原則を守りつつ、さらなる領域にチャレンジされている姿勢を、ぜひ学んでいきたいと思います。
また、自社技術のグローバルでの展開のために、「国際圧入学会」を立ち上げ、圧入工学の進展に世界規模で取り組んでいらっしゃる点に深く感銘を受けました。圧入原理の優位性を体感できる実証施設を構築して、世界中から技術者を日本に招き入れ、現場でノウハウを伝えていらっしゃいます。
技研製作所様をはじめ、ランドログパートナーの皆様と建設業全体の底上げに向け、ともに協創関係を作っていければと強く思いました。
東京本社: 東京都江東区有明3丁目7番18号 有明セントラルタワー16階
高知本社: 高知県高知市布師田3948番地1
従業員数: 633名(連結/2020年8月末現在)
事業内容: