【社名変更のお知らせ】
本インタビューは、三菱UFJリース株式会社様が2021年4月1日に日立キャピタル株式会社様と経営統合し、「三菱HCキャピタル株式会社」へ社名変更される以前(2021年2月)に行われたものです。本記事では、インタビュー当時の社名である三菱UFJリース株式会社(MUL)様として記載しつつ、現在の社名についても触れています。
ランドログとともに、建設業界が抱える課題解決にチャレンジする企業を紹介するランドログパートナーインタビュー。第2回は、国内・海外に広く事業展開し、様々な業種・業界に対してリースをはじめとする多様なファイナンスソリューションを提供されている三菱HCキャピタル株式会社様(インタビュー当時は三菱UFJリース株式会社様、以下、MUL様)にお話を伺いました。
MUL様は、ランドログが提供する「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」を、自社プラットフォーム「@For-cus」上においてサブスクリプションモデルで提供することを通じて、建設業界への新しいビジネスモデル提案に挑戦されていました。
<お話を伺った方>(役職はインタビュー当時)
久笠 執行役員三菱UFJリース株式会社 デジタルビジネス推進部長
菅本 次長三菱UFJリース株式会社 デジタルビジネス推進部
塩谷 課長代理三菱UFJリース株式会社 デジタルビジネス推進部
萩原 チームリーダー三菱UFJリース株式会社 デジタルビジネス推進部
大杉 課長代理三菱UFJリース株式会社 セクター第三営業部
甲斐 様三菱UFJリース株式会社 市場開発部
取材日:2021年2月某日
取材場所:三菱UFJリース株式会社 本社(東京・丸の内)
(本記事は、ランドログパートナーインタビューの第二回です。)
ランドログ:まずは御社についてお聞かせください。
MUL様(久笠執行役員):当社はリースを中心としたファイナンス事業を展開しています。
中期経営計画では、「アセットビジネスのプラットフォームカンパニーをめざす」というキーワードを掲げて事業展開を行っています。当社グループの強みをベースに、アセットホルダーとして「アセット価値創出力」を活かしたビジネスを積み重ねていくことで、アセット価値を収益化していく、という考え方です。
「アセットを最大限に活かす」ためには、パートナー企業様と協創関係をいかに構築していくかが重要であり、まさに第一歩を踏み出したところです。当社デジタルビジネス推進部のミッションにおいて、その取組みの1つがデジタルプラットフォーム「@For-cus」です。私たちは、この「@For-cus」を通じてお客様・パートナー企業様と協創し、建設業界向けに新しい価値を提供することをめざしています。
ランドログパートナーの各社様ともお互いに連携を深め、各社様が保有している商材を市場に対してスケールさせるため、新たな販売モデル等の協業を模索していきたいと思っています。
これからは、モノをリースするだけではなく、モノを通じて提供する価値に積極的に関わっていきたいと考えています。
単純に買うしか選択肢がなかったモノを、サブスクリプションサービスで提供できれば、お客様が必要なときに、必要なモノを、すぐに入手して使えるようになります。
また、オンラインを活用した取引により、顧客利便性の向上にもつながると考えています。
ランドログ:次に、「@For-cus」についてお聞かせください。私たちランドログでも、「@For-cus」を立ち上げ、スマートコンストラクション・レトロフィットキットのサブスクリプションモデルの提供を聞いたとき、純粋に「すごいな」と話題になりました。
MUL様(久笠執行役員):当社としても初めての取組みであり、様々な課題やリスクを乗り越えて、ようやく昨年11月末にリリースすることができました。
今後はこのビジネスプラットフォームに対する、皆様の認知度向上や、i-Constructionの推進に貢献すべく取扱う商材を増やしていくことが重要だと考えています。
ランドログ:「@For-cus」の市場認知度やパートナー間の連携は重要ですね。
MUL様(久笠執行役員):連携を活性化させないと、ビジネスプラットフォームへの送客数もあがっていかないと思っています。その観点では、既に成功しているプレイヤーと連携していくということも必要なのかなと考えています。
当社の根幹となる既存の領域は大事にしつつ、一方でリースのメリットそのものが、会計制度の変更など、様々な要因も相まって狭まってきている状況もありますので、お客様のニーズに合わせ、新たな角度でビジネスを考えていかないと事業としての広がりが実現できないと考えています。
「@For-cus」は、そのような今までと異なる視点でのビジネスモデルを実現できるプラットフォームであり、その第一弾のサービスが今回のサブスクリプションモデルの実現です。
MUL様(萩原チームリーダー):(「@For-cus」の第一弾サービスについて)2020年11月30日より、オンライン取引のためのビジネスプラットフォーム「@For-cus(アットフォーカス)」の提供を開始しています。審査、契約、顧客管理、請求、回収といった一連の手続きを、ウェブサイトにおいてワンストップで行うことが可能となり、提供者と利用者双方の利便性が高まります。
パートナー各社様が保有する価値あるアセットをサブスク、従量課金等の新たなサービスモデルで、順次、商品やサービスを追加して提供する予定です。
(第一弾のサービスは)コマツ様が開発したスマートコンストラクション・レトロフィットキット(ICTの後付けキット)をサブスクサービス『月額サービス料: 40,000円(税抜)』で提供しています。サブスクによりICT導入の初期コストを低減することができ、また、サービスが不要になった際は、いつでも解約することが可能です。
ランドログ:このサブスクリプションモデルをやろうと思ったきっかけは何でしょうか。
MUL様(菅本次長):当社にてお客様への新たな価値の提供として「既存のフィジカル(対面式)のアプローチに留まらず、Webなどのデジタルを使ったアプローチの実現」を構想する中、コマツ様でも新製品をサブスクで提供することを検討しており、新たな取組みへの挑戦のタイミングが一致したため、業務提携により当社にてサブスクサービスを提供する運びとなりました。
ランドログ:ランドログパートナーに加入されたきっかけにもなるのでしょうか。
MUL様(菅本次長):コマツ様はダントツ経営により建設現場のICT化を強く進められているリーダー企業であり、ランドログには豊富な建設現場のデータが蓄積されています。データを使いこなすことで次のビジネスにつながる可能性があり、人口減少や高齢化等の課題を抱える建設業界に対し、当社の新しいサービスによって業務効率化や生産性向上等の支援ができないかと考え、ランドログパートナーに参加いたしました。
当社としては、加入して終わりとは考えていません。現在提供しているスマートコンストラクション・レトロフィットキット・サブスクサービスで実績を積み、他のソリューションでも協業できればと考えているところです。
実際、当社自身が建設業界に対して深い知見があるわけではありませんので、ランドログを通じて様々なパートナー様ともつながっていきたいと思っています。当社が建設業界で注目してもらうためには、今までと同じようなことをやっていても勝てないという思いが強いです。
ランドログ:ランドログのパートナー制度に加入するきっかけは様々です。MUL様自身がリスクをとってチャレンジした点は素晴らしいと思いました。
MUL様(久笠執行役員):実は、「@For-cus」を立ち上げているときは必死でしたので実感がわかなかったのですが、リリースした後に色々な話を聞いて皆様の声を実感し始めています。
ランドログ:サブスク事業立ち上げに関して、感じている課題はありますでしょうか。
MUL様(久笠執行役員):やはり、「サブスクリプションモデルというビジネスがある」ということを知っていただくことが直近の課題だと思っています。
ICT施工を求められている建設現場に対して、機械を購入するだけではなく、サブスクでも対応できるということを広めていきたいと考えています。その点でプロモーションなどは気にしているところです。
MUL様(久笠執行役員):デジタル化をこれから進めていこうという業界でもあると思いますので、Web広告だけではなく、口コミなどでも広がっていくようなマーケティングにしないと難しい業界だろうと想像しています。そういった意味で、業界のトレンドとなるような横の連携を図っていきたいと思います。継続利用という観点でサブスクリプションモデルの良さを伝えることができればと考えています。
実際、お客様より「これくらいなら払える」という声をいただき、提供価格についても踏み込んでいます。私たちの提供価値の意味を市場の皆様に感じていただきたいと思っています。
ランドログ:確かに、「そういう活動(思い)の価値を知ってもらうこと」は重要だと思いますし、ランドログがパートナーのためにやらないといけないことだと感じました。
MUL様(久笠執行役員):あとは、オンラインで取引することの利便性も重要だと思っています。既存のルートセールスでお客様と対面営業することも大事ですが、デジタルでの取引により24時間365日、利用できるメリットがあり、自分で契約行為まですべて実施できるという点や、時間を有効に使える点など、結果的に生産性の向上につながっていくと思うのです。
このビジネスプラットフォームに対する取組みは、結果的に建設業界の優位性に繋がっていくと思っています。未来への投資という視点で見ていければいいと思っています。実際、「世代交代」というキーワードとともにデジタル化も進んでいくと思っています。
ランドログ:「世代交代」については、建設業ではなく、全国の中堅中小企業の方々にとっても重要な課題だと思います。
MUL様(久笠執行役員):また、「@For-cus」には面白い特徴があるのです。通常Webサービスは直販を指向するものです。しかし「@For-cus」は、代理店の方々が今まで通り販売しても、「@For-cus」を通じて申し込みができます。代理店販売とダイレクト販売の両方に対応できているプラットフォームなのです。
代理店様にとって、対面営業から直販への切り替えなどは大きなやり方の変化だと思うのですが、そういう一方的な舵の切り方ではなく、両方を選択できるようにし、変革の過渡期に合ったプラットフォームを提供していきたいと考えております。
ランドログ:建設業界は、なかなかデジタル化が進んでこなかったという声を聞きますが、建設テックやConTechなどのキーワードをはじめとした、良い意味の外圧(流れ)によって、デジタル化に向けた動きが活性化していくのではないかという期待感があります。プラットフォームの立ち上げに関して感じている課題はありますでしょうか。
MUL様(菅本次長):ビジネスプラットフォームという観点で考えると、新しい取組みは既存プレイヤーが色を出しすぎると進まず、オープンプラットフォームになりにくいのではないかと感じています。ランドログのようにオープン性を掲げて進めていくことは重要だと思いました。「@For-cus」も色に染まらないオープンなものをめざしていますので、幅広いパートナー企業様との連携を模索している最中です。
ランドログ:実際、ランドログでも苦労しています。
MUL様(菅本次長):それでも、続けていくことが重要だと思います。既存の業界慣習(安定的なビジネス基盤)がある中で、「敢えて波風を立てることをするかしないか」ということだと思っています。当社が「@For-cus」でチャレンジしたことは、業界内外で様々な意見があると思いますが、そこで何かが生まれればと思っています。ランドログパートナー各社様の中にも、当社の新しいチャレンジに共鳴いただける企業様もいると思いますので、お互いに新たなビジネスを検討しながら、当社としてどのように貢献できるかを考えていきたいと思っています。
ランドログ:パートナー制度に加入して良かった点や今後期待する点はいかがでしょうか。
MUL様(久笠執行役員):当社はファイナンスに紐づくアセットを持っていますが、そのアセットのデータを連携させることが重要と思っています。データ連携により、お客様の利便性を向上させる新しいサービスが生まれる可能性があるからです。新しいサービスが生まれると、また、そこに新たな価値のあるデータが生まれます。その新しいデータを使って、さらに新しいビジネスを生み出していくといった循環が理想です。
オープンなIoTプラットフォームを提供されているランドログとも協力しながら、当社のチャレンジを世の中に広めていくことに期待を持っています。
「@For-cus」というビジネスプラットフォームを創出し、新しいサービスモデルの提供にチャレンジされている、三菱UFJリース様(現:三菱HCキャピタル様)にお邪魔しました。
今回のインタビューでは、皆様のデジタルビジネスに対する取組みの姿勢と、「未来への投資」というメッセージに強く共感できました。
インタビュー中は、建設業の方々にヒアリングした時の経験談や、関連するプレイヤーとのやり取りなど様々な話題に及び、取材時間があっという間に過ぎた感じです。
既存のビジネスに対する概念を超えていくには、このようなチャレンジが必要だと改めて感じるとともに、ランドログパートナー各社をはじめとして、業界問わず、新しいビジネスの可能性を秘めたビジネスプラットフォームの存在を広く知っていただくことで、新たなビジネスモデル検討の一助になればと思いました。
https://www.mitsubishi-hc-capital.com/ (三菱HCキャピタル現在のサイト)
本社所在地: 東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング
従業員数: 連結3,389名、単体1,416名 (2020年9月末現在、三菱UFJリース当時)
事業内容 (三菱UFJリース当時):