ランドログとともに、建設業界が抱える課題解決に挑む企業を紹介するランドログパートナーインタビュー。第4回は、2021年5月に幕張メッセ(千葉)で開催されたCSPI-EXPO2021に出展された、株式会社タダノ様のブースにお伺いしました。
株式会社タダノ様は、ランドログパートナー制度立ち上げ時から参加して頂いており、自社で提供している油圧式クレーンから取得できるデータだけではなく、建設業界の様々なプレイヤーとの連携によってデータを活用していくことで、建設業界全体のDX推進に取り組まれています。
<お話を伺った方>
平田 主査株式会社タダノ ソリューション推進部企画グループ
上野 アシスタントマネージャー株式会社タダノ マーケティング部商品企画グループ
取材日:2021年5月14日
取材場所:CSPI-EXPO2021 タダノ様出展ブース
(本記事は、ランドログパートナーインタビューの第四回です。)
タダノ様(平田主査):当社は、主に建設用クレーンや、車載型のクレーンなどを製造している企業でして、当然、私たちが製造した建設用クレーンに関しては、稼働状況などのデータを取得できる独自の仕組みを持っています。そのデータを使い、お客様にさらなる価値をお届けするためのソリューションサービスを構築して提供してきました。
そのような中、私たちの業界全体を見回した際、建機メーカ各社が独自システムを持って運用している状況であることがわかりました。
それぞれの会社がそれぞれの顧客に対して価値を提供している状況ではありますが、逆にいうと、「顧客が個社ごとにロックインされている状況は、顧客にとって果たして幸せなのか」と考えるようになりました。
顧客に対する新しい価値を検討していくなかで、デジタルソリューションの分野で先をいく北米からの様々な情報に強く刺激を受けたのです。日本のメーカが提唱するデータの一元管理などは、今から7~8年前から導入検討が進んでいたのです。
ランドログ:北米からの様々な情報を得て、どのような検討をされたのでしょうか。
タダノ様(平田主査):お客様の情報資産を提供側のメーカーが個社ごとで抱え込み、独自システムを提供することをやっていては、グローバルでは相手にならないと思いました。つまり、オープンプラットフォームを活用して、シームレスにデータを使っていかないと、お客様に対する本当の価値提供を考えることができないのではないかと考えました。
そのような議論のなかで、「ランドログ」という企業が立ち上がり事業目的を拝見したところ、当社(タダノ)の想いと同じ方向を向いていると思いました。ランドログと一緒に活動すれば、業種業態を問わず、様々な分野でデータを通じたコラボレーションができるのではないかと感じました。
ランドログ:パートナー制度の加入は、タダノ様の業界に対する強い思いからなのですね。
タダノ様(平田主査):正直、オープンプラットフォームやデータ連携などは、やってみないとわかりません。しかし、挑戦することで、その取り組みがお客様のメリットにつながっていき、参加しているデータ提供側にも利益が還元されるのではないかと思いました。
実際、北米で建設系ソリューションを提供している企業は、データを活用するという観点から、様々なパートナーとコラボレーションしている状況にあります。共通プラットフォームを持つ会社はプラットフォーム間の連携を行い、購買や調達やメンテナンスやファイナンスや、様々なデータがつながっていく状況を知ると、現状に対して危機感を抱かずにいられません。
「オープンプラットフォーム」・「様々なデータの連携」など、ランドログと同じ理念で活動ができると感じた点が、ランドログ加入のきっかけと言えると思います。
タダノ様(平田主査):大きく2つの課題があると感じています。
1点目は、ランドログオープンプラットフォームに対するデータの収集という点だと思います。ランドログの皆様がオープンである意識をもって活動されていることはパートナーとして認識していますが、実際はコマツ様の色が強いと感じます。コマツ様の建機を扱っているパートナーは活動に参加してくると思いますが、コマツ様以外の建機を扱っている企業の参加が少ないと感じています。
2点目は、データを提供する企業側として、ランドログが主催する技術講習会で感じた課題です。オープンプラットフォームへの接続に関しては、ある程度の技術や知識が求められると感じました。一般的にコンサバティブなメーカはITとは距離があると思います。データをオープンプラットフォームでつないでいくというアイディアは良くても、実際には「どうやったらいい?」という技術的なハードルがあると思いました。
タダノ様(平田主査):情報をオープンにすることで、その企業のノウハウが流出してしまうと考えるのは少し違うと思っています。オープンにすることでの課題は、「データの持ち主は誰であるか」という点です。
当社の製品をお使いのお客様のデータは、当社が勝手に第三者に提供することはできません。機械の情報や、使い方の履歴情報を見られたくないというお客様も当然いらっしゃいます。
例えば、建設現場で移動式クレーンのデータをゼネコンなどが利用した際に、クレーンのオーナー(クレーン事業者)に直接的なメリットがないと、データを提出する意義を感じてもらえないと思います。
実際のところ、データの活用により価値提供ができる市場は海外にあるのではないかと考えています。当社(タダノ)においても、海外のお客様のほうがデータを活用するニーズが高いです。日本と比較することではないのでしょうが、海外のお客様のほうが「目的に叶った形でデータを活用している」という感覚です。北米では何でもIT化しています。昨今のコロナ対策においてもITを使っています。目的を達成するためにデータを活用していくというように、目的と手段を混同していない点が見習うところだと思います。
ランドログパートナー活動の中で、海外の先進的な技術をマネて、そしてサンプルとして国内のお客様に見せるような活動をすることで、日本国内の業界DXが進んでいく助力になるのではと思います。
ランドログ:それではタダノ様のブースでお話を聞かせてください。
タダノ様(平田主査):今回、イベントでも展示しておりますが、2つのソリューションを紹介させてください。
1つ目は「Lift API」という、当社(タダノ)製のクレーンから取得できる様々なデータを提供するAPI群を提供するサービスです。
2つ目は、「ゲンバデサポート」というスマートフォンアプリの提供です。これは、タダノの車載型クレーンを利用されるお客様が、クレーンから出されるエラーコードをアプリで確認したり、現場での対処方法がわかるスマホアプリです。
タダノ様(平田主査):これは、タダノ製のクレーンの演算機能やテレマティクスデータをインターネットで提供するAPI群のことです。当社製のクレーンのデータを、他の建設系ソフトや、他の建設現場のデータと組み合わせることを通じて、お客様に価値を産みだすことができると考えています。
また、タダノ製クレーンのBIMモデルを無償で公開しています。このデータはもちろんBIMアプリケーションAutodesk® Revit® で活用いただけるようになっています。
クレーンを実際の3Dモデル内で動かすこともできるため、揚重の計算やクレーンの設置場所などを検討することができます。
ランドログ:興味深い取り組みですね。
タダノ様(平田主査):今回の展示では、Autodesk® Revit® でBIMのモデルが動作しているところをご覧いただけます。
大事なことは、BIMを利用されている方が、建設用クレーンのデータを作るのが大変だという声からなのです。実際のクレーンのデータ作成はとても大変なので、作業負担を軽減できればという考えで取り組みました。このような取り組みからも、建設業界全体のDXに貢献できればと考えているところです。
タダノ様(上野アシスタントマネージャー):お客様が現場で利用されている車載型クレーンの支援をスマートフォンアプリで実現するサービスです。
車載型クレーンのコントロールパネルに表示されるエラーコードや、カーゴクレーンが発する音声メッセージを検索して、詳しい内容や、現場での対処方法を調べることができるアプリケーションです。
他には、車載型クレーンの取り扱い方法を動画で見ることができたり、点検・整備のためのサービス工場を地図で検索することができます。
緊急時は、ハローサービス24コールセンター(ナビダイヤル)により、オペレータが対応しています。
ランドログ:アプリケーションを提供した反響はいかがですか?
タダノ様(上野アシスタントマネージャー):まだ提供開始後でもあり十分にお客様の声が集まっていない状況なのですが、当社(タダノ)としては、このようなアプリケーションにより、現場で作業されている方が困ったときに、スマホなどの情報ツールで多くの情報を入手し、現場の方を支援することができるという点を、広く知っていただくことに価値があると思います。
ランドログ:ご紹介いただいたサービスは、動画などで知ることができるのでしょうか。
タダノ様(上野アシスタントマネージャー):そうですね。当社のYouTubeのタダノ公式サイトにも掲載しています。そのほかに、先ほどご説明した「Lift API」 + 「BIMモデル」についても動画がありますので是非ご覧いただければと思います。
タダノ様(制作秘話より):きっかけは営業マンの気付きでした。入社13年目の営業マンさんは、カーゴクレーンの営業を担当。商談から製品の手配など幅広い業務の中で、カーゴクレーンを納めた後のお客様のサポートを特に大切にしていました。お客様から「カーゴクレーンが動かなくなって困っている」と電話が入ると、最優先でご回答するよう心がけていました。電話越しの説明で伝わりづらいときは現場まで奔走し、実際には機械の故障ではないこともありましたが、親切な対応が次の際に繋がっているという実感がありました。
建設資材の積み下ろしなどに使うトラック積載型クレーン「カーゴクレーン」は、近年、ZRシリーズからZEシリーズへ、そしてZX・ZSシリーズへと進化を遂げました。機能性や安全性が向上した一方、制御が複雑になったという側面もあります。
Sさんが日々接しているお客様は、運送業のトラックドライバーのように、トラックの運転がメインの業務という方がほとんど。建設業から造園業まで業種も多岐にわたり、レンタル会社から一時的に借りて使うお客様も多いのが特徴です。
カーゴクレーンをじっくり触ったことのないお客様は、現場作業中にカーゴクレーンのトラブルが起こったら、どんな気持ちになるのだろうか。焦り、困惑、いら立ち・・・。そのような不安を軽減できれば、もっと安心してカーゴクレーンをお使いいただくことができるだろう。とSさんは考えました。
安心を届けるために、しかし、24時間365日、営業マン自身がいつでもお客様の現場に駆けつけることはできません。そこで、お客様がいつも持ち歩いているスマートフォンを使うことを思いつきました。
スマートフォンを使えば、クレーンの機構のような複雑な説明も、動画でわかりやすくお伝えすることができる。ちょっとした通信環境の変化などでもクレーンに表示される「エラーコード」の意味をお客様自身で調べて、クレーンの不具合ではないことがわかれば、安心して作業を継続することができる。問題の解決速度を上げれば、お客様の業務効率が向上し、喜んでもらうことができるだろう。
このような気づきから、スマートフォンアプリ「ゲンバデサポート」の開発がスタートしました。
タダノ様(平田主査):当社では近年、社内で様々なデータ活用モデルの検討を行ってきました。並行してランドログを通じたパートナー活動も同様です。私たちの感覚ではありますが、当社のトップ層をはじめとしてデータビジネスに関する意識が社内全体で変わりつつあると感じています。毎年度、DX元年のようなイメージで社内議論が行われているとでも言えると思います。そこが大きく変わったところでしょうか。
ランドログは、当社も含めた様々なパートナー企業が集い、必要なデータがランドログに行けばあるというオープンデータプラットフォームが実現できるようになればいいなと考えています。
■COVID-19による緊急事態宣言のなか開催されたCSPI-EXPO2021でしたが、来場者制限や入口での検温・消毒等の対応により無事開催されました。
■タダノ様へのインタビューは、タダノ様をはじめ来場者様のご迷惑にならないよう、イベント会場の隅で取材させていただき、また、長時間の対面とならないよう留意いたしました。
■今回、タダノ様が発表されていた「Lift API」は、タダノ様のクレーンのデータを提供するAPI群です。インタビューの中でオープンな取り組みについてご説明いただきましたが、まさに有言実行のソリューションであると感じました。
■ランドログも、このような活動をされている企業様との連携や、データの繋がりを通じて、建設業界の底上げに寄与したいと思います。
Autodesk® Revit® は、いずれも、米国Autodesk, Inc., およびその子会社、または他国の関係会社の商標です。
本書に記載されている会社名、製品名は、それぞれ各社の商標および登録商標です。
本書に記載されたURL等は、予告なく変更される場合があります。
商号: 株式会社タダノ
設立: 1948年8月24日
本社: 香川県高松市
資本金: 13,021,568,461円
従業員数: 単独1,438人、連結5,084人 (2020年3月31日時点)
事業内容: 建設用クレーン、車両搭載型クレーン及び高所作業車等の製造販売