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【建設DXインタビューリレー Vol.8】現場が求める建設DX:人材育成からスタートする変革 – CIVIL CREATE株式会社代表 川西氏 × ランドログ(前編)

【建設DXインタビューリレー Vol.8】現場が求める建設DX:人材育成からスタートする変革 – CIVIL CREATE株式会社代表 川西敦士氏 × ランドログ(前編)

【建設DXインタビューリレー Vol.8】現場が求める建設DX:人材育成からスタートする変革 – CIVIL CREATE株式会社代表 川西敦士氏 × ランドログ(前編)

建設業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、技術の進歩と共に新たな段階を迎えています。BIM/CIMやi-Constructionといった先進的な取り組みが推進される一方で、現場レベルでのギャップや人材不足という根本的な課題が浮き彫りになってきました。本稿では、大手ゼネコンで19年間にわたり技術開発とDX推進の最前線で活躍し、現在はCIVIL CREATE株式会社を設立された川西敦士氏に、建設DXの現実技術と現場のギャップ、そして「人材」を中心とした課題解決アプローチについて詳しくお話を伺いました。

<お話を伺った方>

川西 敦士 氏
CIVIL CREATE株式会社 代表取締役CEO
大手ゼネコンにて19年間、設計・技術開発・施工管理・DX推進に従事。DX施策や技術戦略を担当する中で得た知見を強みに、2024年4月、CIVIL CREATE株式会社を立ち上げ。代表取締役CEOに就任。
(本記事は、日本の建設DX・建設IoTが目指すべき方向性を探る『建設DXインタビューリレー』の第八回です。)

建設DXの先駆的取り組みと起業:現場経験から見出した「人材」中心の課題認識

―― 川西さんのご経歴について簡単にお伺いしてもよろしいでしょうか。

川西

大手ゼネコンにて19年間勤務し、キャリアのスタートは設計からでした。その後は技術開発や施工管理など、土木に関わる幅広い分野を経験しています。

ゼネコンというと、一般的にはまず現場に出て施工管理に携わるというイメージがあるかもしれませんが、私の場合は少し異なり、設計技術者として基礎技術を深く学ぶところからスタートしました。

現場での施工管理も経験していますが、すべての現場業務に関わってきたわけではありません。自らが開発した技術に関しては、実際の現場でフィードバックを得ながら改善を進めるという形で関わることが多く、そうしたプロセスが技術者としての強みを形成してきたと感じています。

私が入社した2007年当時、同期は20人ほどいましたが、その中で設計部門に配属されたのはごく少数でした。ただ、設計や技術開発といった内勤中心のキャリアパスにも、昇進のチャンスや技術を活かせる場があると感じたこともあり、そうした道を選んだという面もあります。

結果として、現場と技術開発の両面から経験を積ませていただいたことが、後にDX推進や起業へとつながる重要な土台となりました。

―― 技術開発の道を進む中で、特に印象に残っていることはありますか?

川西

技術開発というキャリアパスの中でも、自ら手がけた技術を現場で試し、フィードバックを得ながら改善していくプロセスに、大きなやりがいを感じてきました。こうした取り組みは、私のキャリアの初期から継続して行ってきたものです。

当時はまだ「ICT」や「i-Construction」という言葉すら一般的ではありませんでしたが、私は比較的早い段階から、デジタル技術を取り入れた機械や工法の開発に取り組んでいました。その流れの中で後に、これらが国の推進するi-Constructionの方向性と一致していることに気づいたとき、「ああ、こういう名前になるのか」と感じたのを覚えています。

特に印象に残っているのが、新幹線関連の鉄道工事です。軌道下1mという非常に厳しい条件下での施工において、当時としては画期的なモーションキャプチャによる画像計測技術を導入しました。これにより、重機の動きを0.1mm単位で制御することが可能となり、施工精度と安全性の両面で高い成果を上げることができました。

現場からも「こういった技術があるのか」「これなら安心して任せられる」といった声をいただき、自分たちの挑戦が形になったことに大きな喜びを感じました。新しい技術が常に受け入れられるとは限りませんが、現場にとって本当に役立つものを届けたいという思いが、自分の原動力となってきました。

―― その後、DX推進に関わり、現在はCIVIL CREATE株式会社も設立されていますね。

川西

2019年に、社内で本格的にDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が始まったタイミングで、初期メンバーとしてその取り組みに関わることになりました。私自身、これまでの技術開発の経験を通じて、「技術はあるのに、それを現場で活かしきれていない」と感じる場面が多くあり、その課題意識がDXへの関心にもつながっていきました。

その後はIT部門など様々な部署を経験し、昨年からは再び技術部門に所属しています。こうした多様な経験を通じて、「自分にとって有意義だと感じる技術を活かしながら、もっと自由に面白い取り組みができないか」という思いが強くなっていきました。

そのような経緯で立ち上げたのが、CIVIL CREATE株式会社です。建設分野に限らず、より広い意味で「人材」を中心に据え、課題解決に取り組むことを目的とした会社です。技術や仕組みがどれだけ進化しても、それを活用し、広げていくのは最終的には"人"です。だからこそ、技術だけでなく人材開発の視点が欠かせないと感じています。

―― CIVIL CREATE株式会社では、当初から「人材」に注目されていたのですか?

川西

立ち上げ当初は、BIM/CIMやi-Constructionに関連する3Dデータ作成支援や、オンライン教育の仕組みづくりを行ってきました。特に3Dオペレーター不足といった業界課題に対して、現実的な解決策を提示することを目指しました。

しかし実際には、地方の中小建設会社では、3D業務が日常的に発生するとは限らず、企業ごとの規模や人材構成によって、デジタル化への取り組みに大きなばらつきがあることも実感しました。国が推進しているBIM/CIMの取り組みも、現場レベルで見ると「本当にこれが日々の仕事として成立するのか?」というギャップが存在しています。

そのような現実を受け止めたうえで、私たちは「人」を軸に、もう一段階視野を広げたアプローチが必要だと考えるようになりました。

「人」中心の解決策:スポットワーク、資格支援、AI活用、i-Constructionの現実と向き合う

―― BIM/CIMや3D技術の推進と、現場のニーズにはギャップがあると。そこから、どのようなアプローチを考えられたのでしょうか?

川西

BIM/CIMや3D技術の推進は、時代の流れとして不可避なものではありますが、それが現場の業務に直結するかといえば、必ずしもそうではありません。現実として、毎日3Dデータを扱うような案件が常に存在するわけではなく、企業の規模や地域によって、デジタル技術の活用状況には大きな差があります。

こうした現実に直面する中で出会ったのが、「スポットワーク」という働き方でした。現在は「建設タイミー」という形で、タイミー社と連携し、建設業におけるスポットワーク人材の活用と採用支援を行っています。

スポットワークというと、単なる短期労働・外注のようなイメージを持たれることもありますが、私たちが目指しているのはそこからの「人材獲得」です。実際に現場で短期間働くことで、企業との相性や仕事の雰囲気を体感してもらえるため、従来の採用活動にはないメリットがあります。

タイミーの登録者は1100万人を超え、そのうち3割は20代の若年層です。建設業界では、若い世代との接点が限られている現状がある中で、この層に直接アプローチできるという点は非常に大きな可能性を感じています。

この取り組みの根底にあるのは、「現場を動かすのは人である」というシンプルな事実です。技術継承も施工管理も、最終的には人の力に支えられています。デジタルツールはあくまで手段であり、それを使いこなし、現場に活かしていくのは人材次第です。

―― 人材獲得の次は、「資格」にも着目されているのですね。

川西

そして、私たちが次に注目しているのが「資格取得支援」です。特に建設業界では、1級土木施工管理技士のような国家資格の取得が、個人のキャリアや企業の事業展開に直結しています。

地方の中小建設会社にとって、資格を持った人材の存在は、受注機会の拡大や公共工事の対応力にもつながるため、非常に大きな意味を持ちます。私たちは、そうしたニーズに応えるべく、効率的かつ継続的な資格取得支援の仕組みづくりに取り組んでいます。

スポットワークから現場を知り、必要な資格を取得し、長期的に業界に関わる――そんなキャリアパスを支える仕組みを、少しずつ具体化していくことが今後の目標です。

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