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【建設DXインタビューリレー Vol.10】「ワクワクする気持ち」から始まるイノベーション:3DからAR・AIまで、現場に寄り添う技術開発 – ネクステラス代表 木下氏 × ランドログ

【建設DXインタビューリレー Vol.10】「ワクワクする気持ち」から始まるイノベーション:3DからAR・AIまで、現場に寄り添う技術開発 – ネクステラス代表 木下氏 × ランドログ

【建設DXインタビューリレー Vol.10】「ワクワクする気持ち」から始まるイノベーション:3DからAR・AIまで、現場に寄り添う技術開発 – ネクステラス代表 木下氏 × ランドログ

建設業界のデジタル化において、技術そのものの進歩だけでなく、「現場に寄り添う姿勢」が重要な要素となっています。本稿では、3Dデータ活用の黎明期から現在のAR・AI技術まで、一貫して現場のニーズに応える技術開発を続けてこられたネクステラス代表の木下氏にお話を伺いました。「ワクワクする気持ち」を起点とした技術開発お客様との近い距離感を活かした機動力のあるサービス提供、そして異業種連携による新たな可能性の探求について、詳しくお聞きします。

<お話を伺った方>

木下 大也 氏
株式会社 ネクステラス 代表取締役
住友金属工業株式会社、株式会社岩崎を経て、ネクステラスを設立。3Dデータ活用の黎明期から建設現場のデジタル化に携わり、現在はAR・AI技術を活用した現場支援サービスの開発・提供を行う。
(本記事は、日本の建設DX・建設IoTが目指すべき方向性を探る『建設DXインタビューリレー』の第十回です。)

3Dデータとの出会いと技術への情熱:建設業界における「見えないものを見せる」への探求

―― まず、木下さんのご経歴について簡単にお伺いできますでしょうか。

木下

以前は株式会社岩崎に勤務していました。そこでは北海道の建設会社を顧客とする商社として、当初は営業職でしたが、最終的には技術部門を担当するようになりました。その頃からBIM/CIM、DX、i-Constructionといった技術が注目され始め、そういった時代の流れの中にいたという形です。お客様の元で、例えば3Dデータを計測する製品の提案をしたりもしていました。

現在の会社は3社目ですが、その前が岩崎、さらにその前が住友金属工業株式会社という会社で、土木の中でも特に、港湾や橋梁の設計〜施工に携わっていました。その頃から漠然と3次元データに興味があり、もし3次元データがあれば現場がもっと効率化できるのに、と感じる場面がありました。当時のパソコンのスペックやソフトウェアでは、3次元データを自由に操作できるような時代ではなかったのですが、そうした発想を持つ人は当時から少数派ではあるものの一部にいらっしゃったと思います。

3Dデータがあることで、周囲の人に説明しやすくなるという点が、最初にその活用を考えたきっかけの一つでした。また、当時の現場での経験を振り返ると、図面が当然ベースになるのですが、隠れて見えない部分の構造がどうなっているかなどを確認する際に、3次元でシームレスに見られることは非常に有用でした。断面図だけでは、その間の部分をイメージでつなぎ合わせる必要がありましたが、3次元で見ることができれば、より楽しく、スムーズに作業を進められるだろうという思いが根本にありました。

―― 当時から3Dデータの活用がビジネスになるという感覚はお持ちでしたか?

木下

当時、それが直接ビジネスに繋がるという感覚はあまりありませんでした。それよりも、目の前の仕事をいかに楽に進めるか、あるいは「こうなったらいいな」という思いが強く、3次元技術そのものに興味がありました。ただ、それがビジネスになるところまでは考えていませんでした。しかし、このような技術を求める人々は徐々に増えていくだろうという予感はありました。

その後、CAD技術もCivil 3Dの登場を経て、様々な企業から3次元CADが発表され、パソコンのスペックも飛躍的に向上しました。そして、15年から20年を経て、ようやく実用的に使えるようになってきたという状況です。確実に「いける」という感覚を感じたのは、電子納品やCALS/ECといった言葉が聞かれ始めた頃からです。デジタル技術が必要だと気づく人が少しずつ増えてきたように思います。

起業への道のりと経営哲学:「ワクワクする気持ち」を大切にした技術開発とサービス提供

―― 起業に至ったきっかけや当時の思いについてお聞かせください。

木下

デジタル技術には以前から興味があり、アナログ技術も当然必要ですが、建設業界はフィールドでの作業が多いため、デジタル技術が浸透しにくい環境がありました。しかし、その中でデジタル技術をうまく活用できれば、まだ浸透しきれていない分、様々な可能性が広がるのではないかという期待感がありました。その可能性の広がりにワクワクするような気持ちがあり、この分野を専門にすれば、小規模でもお役に立てる事業ができるのではないかと考えたのがきっかけです。

やはり建設業界全体、つまり一社一社のお客様に対して役に立ちたいという思いが強かったです。3次元データがどうこうという話だけでなく、お客様が抱えるちょっとした困りごとをデジタル技術で解決したい。そして、それを実現する手段として3次元データのようなデジタル技術を活用したいと考えていました。

会社のホームページにも常に記載しているのですが、「ワクワクする」という気持ちを大切にしたいと思っています。生産性向上や効率化といった数値的な指標ももちろん重要であり、数字によって目標が明確になるという点もあるため、これらも大切にしています。しかし、それだけではなく、「面白いよね」とか「これをやるとうまくいきそうだよね」といった感性的な部分が伴っていなければ、取り組みがスムーズに進まないのではないかと考えています。

―― 起業当初に手応えを感じたエピソードがあれば教えてください。

木下

初期の手応えについてですが、当初は3次元データを単純に作成する業務を行っていました。これは前職でも行っていたことなのですが、4人という小規模な会社で、お客様にどれくらい信頼していただけるのかという不安もありました。しかし、実際に技術面を含めて懸命に対応することでお客様に喜んでいただけた時は、それだけで非常に嬉しく手応えを感じました。

新しい技術や情報を提案し、お客様に活用していただくために、現場で一緒に支援していくことが私たちの仕事のスタイルです。そのため、常に新しい情報を取得し、「こんなものもありますよ」「こういう使い方もできますよ」「こういうことをやってみたらどうですか」といった提案を行い、お客様の意見も伺いながら、共に発展してきました。

最近感じるのは、お客様の方から情報収集をされていて、「こんなのあるけど」「こんなAIの…」といった形で、お客様が積極的に情報を持ち込んでくださるケースが非常に増えたということです。逆に私たちが勉強させていただき、「そのようなことにご興味があるなら、こんなのはどうですか」といった、お客様発信での会話が増えてきた実感があります。

AR・AI技術への挑戦:3Dデータを起点とした新たな現場支援サービスの開発

―― ARのような新しい領域への取り組みは、どのような姿勢で進められましたか?

木下

ARに関しては、基本的に3次元技術、つまり3次元データがベースにあります。3次元データの作成にはどうしても手間がかかるため、その手間をかけて作ったデータを様々なことに活用しないともったいない、という思いがまずありました。

自然な流れとして3次元データが必要とされ、最近は流通も増えてきたので、せっかく苦労して作った3次元データを活用しないのはもったいないという考えから、手軽にできるARもその活用法の一つとして有効ではないか、という入り方だったのです。

ARにおいては、例えば地面下に埋まっている埋設物のような、本来目に見えないものを可視化することが大きな効果だと考えています。これをいかに違和感なく見せるかという点に工夫を凝らしました。単に見えないものが表示されるだけでは、目が錯覚を起こして立体感が掴めなくなってしまうことがあります。そこで、地面に穴を開けたように輪っかを通じてのぞき込むように表現することで、「地面の下にあるんだな」と視覚的に理解できるようにしました。

―― AI関連技術についてはいかがでしょうか?

木下

現在、製品化されているものにAI姿勢検知システム『AI's(アイズ)』というものがあります。これはAIカメラが骨格を推定し、作業員が手を上げるなどのジェスチャーを検知して発報するシステムです。3次元データとは少し異なりますが、本来見えないはずの骨格をAIが推定し、デジタル化することで、アナログ的な情報だったジェスチャーが見えないところにいても認識できるようになり、新しいコミュニケーション手法になるのではないかと考えています。見えないものを見せることができるデジタル技術の面白さだと感じています。

これら以外でも、生成AIやAI関連技術を活用して、現場の効率化を図りたいと考えています。例えば、ヘッドマウントディスプレイやスマートグラスを活用して、目の前にある現場の状況をカメラでリアルタイムに認識できるようにし、それを現場用にカスタマイズしてアドバイスを出したり、目の前の情報に付加して検査結果を出したり、AIエージェントが分析したりといったことができないかと考えています。

異業種連携と少数精鋭経営:機動力を活かした意思決定とサービス開発

―― ゲーム業界との連携についてお聞かせください。

木下

ゲーム業界の企業との交流は引き続き重要だと考えています。異業種の方々との交流は私たちにとって非常に大切です。ゲーム業界では2歩先くらいの表現力で技術が展開されていると感じています。その表現力は本当に素晴らしく、人間の想像力をかき立てるものであり、現場が重視される建設業においても、ものづくりを事前にシミュレーションしたり、潜在的な課題を浮き彫りにして事前に解決したりするために有効な技術だと感じています。

―― 4人という少数精鋭で事業を展開されていますが、意思決定のプロセスはいかがですか?

木下

お互いが進みたい大きな方向性が一致しています。少人数で活動しており、自分たちの得意なことと不得意なことも明確に分かっています。そのため、ここは「チャレンジしよう!」という場面と条件的に「ちょっと厳しい」と考える場面があっても、それぞれの判断基準が共通しています。どうしても迷うようなグレーゾーンの時だけ話し合う、それが私たちの決定プロセスとなっています。

機動力があり、スピード感を持って対応することで、お客様も私たちに共感してくださるケースが多いです。お客様も、「この話だったらネクステラスに相談すれば対応してくれる」ということを理解してくださっているのだと思います。

―― お客様からのアプローチが多いとのことですが。

木下

ありがたいことに、お客様から声をかけていただくことの方が多いですね。だいたい7対3くらいの割合かもしれません。やれることが限定的であるため、本当の最初は、こちらからご挨拶に伺うことが多かったですが、その後は「こんなのをやってみないか」と声をかけていただけるケースが多いです。

私たちが「これは面白い」と思っても、意外とお客様は全く興味を示さなかったりすることもしばしばあります。そのため、「こういうことをやりたい」という思いは持ちながらも、あまり自分たちのこだわりに固執せず、お客様と話していると全く別の意見が出てきたり、それが複数のお客様から共通して聞かれるようになったりすると、優先順位を変えようか、といった柔軟性も重視しています。

イノベーションの源泉:「ワクワクする気持ち」を起点とした技術開発の未来

―― 最後に、木下さんが大切にされている「ワクワクする気持ち」について詳しくお聞かせください。

木下

いつも、イノベーションは「ワクワクする気持ち」から生まれる、と言っています。つまり、そういった何かしら、原点がワクワクする感性から始まっているか、ということを常に自問自答するようにしています。

社会人の中盤くらいからでしょうか。最初はやはりルールにがんじがらめに縛られる立場だったので、その反動で「これでいいのかな」と考えるタイミングがどこかで訪れ、「こうしなければならない」といったルールよりも、やはり「楽しい」と思えることを起点にした方が、その後の可能性は広がっていくのではないか、という思いに至りました。私は、新しいことが好きで、実際にいままで新しいことにチャレンジする機会に多く恵まれてきたと思います。しかし、新しいことにチャレンジすると、必ずと言っていいほど周囲から反発を受けることを嫌というほど経験してきました。でも、その道を選択し、その責任をとるのは自分しかいないわけですから、どのみち進むのであれば、楽しいと思える方向に進もうと決めています。松下幸之助さんの言葉で「夢は仕事の出発点:なにごともまず、思い願わなければ始まらない。こうしたい、こうありたいという大きな夢があればこそ、挑戦する勇気も、実現するための方策も生まれてくる。」といったことを言われていますが、まさに、『わくわく』がイノベーションの出発点、だと確信しています。

(ランドログ)

本日は、木下さんの技術に対する情熱と、現場に寄り添う姿勢について詳しくお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。大変参考になりました。

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